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オーギュストは腕を離さず、独り言のようにつぶやいた。
その瞳は、うっとりと夢を見るように細められた。
ミルラの方は、腕をつかまれたまま、
<ああ、なんか変な奴に捕まったけど、どうしよう・・
困ったな>と焦っていた。
「あの・・ですね。
神官様がお待ちなので、放してくださいまし。
ぶつかって悪いのは私ですから、あとで、きちんとお詫びをいたします!」
ミルラは腕を離さないオーギュストに、困り声で、ほとんど叫んでいた。
「神官様、大丈夫ですか?」
向こうから事務官が、走ってくるのが見えたので、
現実に戻ったオーギュストは、仕方なくミルラの腕を離した。
ミルラは息をはずませて、走って来た来た事務官を見ると、
その場に床に座り込んで頭を下げた。
ほとんど、土下座状態である。
「私が父の代理で来ました、画家のミルラでございます。
申し訳ございません。遅刻をしてしまって・・・・
父と連絡がうまくいかなくて・・」
頭を床に下げたまま、ミルラは早口で言った。
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