羽根打新人戦

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「オーバー、トゥエルブ・テン!」 「やったよ蓮志」  精一が思わずガッツポーズを取る。蓮志も今の動きは良かったと思った。蓮志と精一のコンビネーションは未だ試合で通用するレベルだった。  今度は精一がスポーツ刈りの男子の方にサーブを打つ事となった。小さなサーブを精一は選んだ。  それをスポーツ刈りの男子が高く上げる。  蓮志はその烏を追った。そしてそのまま落下点に向かった。蓮志は狙いを定めていた。既に相手をロックオンしていたのだ。蓮志は強烈なアタックをシュシュの女子に向けて放った。  シュシュにポニーテールの彼女はそれを杖をくるりと回して弾いた。もう一度レイブンが高く上がる。  蓮志は攻め続ける。もう一度アタックをシュシュの彼女に向けて放った。  だがそれは読まれていた。シュシュの娘は杖を後ろに引きつつその強打を受けた。それで一気にレイブンの速度が殺された。レイブンは前に小さく返された。  精一がそれを捌かないと行けない。だが精一がここでレイブンをロブ等で高く上げてしまうと、相手側に攻撃の主導権を与える事となってしまう。それは避けて欲しかった。蓮志はここで攻め切りたかったのだ。  その思いは精一に届いたようだった。精一は小さく返って来たレイブンを矢張り小さく返した。あくまでも攻撃権はこちらに有るんだと言いたいようだった。  だがそれはシュシュの少女に読まれていた。彼女はジャンプすると、そのまま強打を放って来た。  至近距離から打たれた一撃は、精一では捌き切れなかった。蓮志は思わずこのラリーは終わりかと思った。  その時だった。蓮志は再度、あの感覚に包まれた。身体の中から溢れるエネルギーが杖先に迸る感じだ。ゆっくりとレイブンが動くように見える。これならば取れる。  蓮志はレイブンを敢えて弱く返した。それによってネット前にレイブンは進んで行った。まだ攻めの手を緩めるつもりは無い。  シュシュの女子がそれに思わず驚いたようだった。まさかあの一打を返して来るとは思っていなかったのだろう。急ぎ間に合わせで上げた烏は中途半端な位置に飛んで行った。  蓮志はそれがチャンスだった。先程の迸るエネルギーを杖の芯に通し、そのまま強烈なアタックを仕掛けた。レイブンは、空を切る音を鳴らしつつ、シュシュの娘に向かって直進した。それはシュシュの女の子では防ぎ切れなかっただけでは無かった。レイブンは彼女の膝にぶつかった。烏が地面に落ち鳴き出すのだった。 「サクシード、フィフティーン・テン! ゲームセット!」
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