第七話『会えない期間』

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第七話『会えない期間』

 あれ以降楽矢とは定期的に連絡を取り合っている。彼からの通知が届くと直ぐに胸の鼓動は加速し、心子の気持ちは一気に楽園に来たかのような幸せな気分で満たされる。しかし一つ問題なのは――彼にデートの日以来会えていないという事だった。 (テスト早く終わらないかな……)  心子は真面目にテスト勉強に取り組んでいた。恋愛にうつつを抜かして赤点でも取った暁には自分で自分を嫌いになりそうだ。心子は成績にはいつも真剣に向き合っていたからである。  楽矢のいる本屋に少しでも立ち寄り、癒しの時間を設けることは何度も考えた一つの息抜き法だったが、一度でも彼に会ってしまえば自分に甘えて楽矢ともっと居たいと思ってしまうかもしれない。それが怖かった為、中々本屋に立ち寄れずにいた。  楽矢にはテスト勉強でしばらく本屋に行けないのだと連絡をしており、彼からはある一文のメッセージを受け取っていた。 『心子ちゃんこんにちは。期末テスト頑張ってね』 (やばい……会いたい……もう二週間も会ってないよ)  心子は楽矢に送られてきた激励のメッセージをスクショし何度も見返していた。勉強に躓いた時、このメッセージを読み返せばやる気が出ていたのは言うまでもない。 「テスト頑張ろ……」  そう口に出し、気合を入れると心子は心を鬼にして勉強に励んだ。
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