電子書籍デビュー

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 窓の外を見ると、ザーザーと雨が降っていた。机の上に置いてあるラジオから、天気予報が聞こえる。今日は一日中、大風の進路のことばかり話している。 「あー、この雨じゃ、マンガ買いにいけないなぁ。今日は『お笑いルーキー』の最新刊の発売日なのに。なんで今日に限って、台風が直撃するんだよ……」  私の名前は、相田(あいだ)かなめ。高校二年生。今日は日曜日で、学校はお休みだ。私は自分の部屋の窓から外を見つめて、深いため息をついた。 「でも我慢できない。せめて、第一話だけでも……」  私はベッドに置いていたスマホを拾った。そして画面を操作して、「お笑いルーキー」の公式サイトにアクセスした。  最新刊の「試し読み」のボタンをクリックして、スマホで最新刊の第一話を読んだ。この作品は一話完結のギャグマンガで、今回の話も、期待通りとても面白かった。 「やっぱ、面白いなあ。でも余計に続き、読みたくなっちゃった。だけどこんな天気じゃ、買いにいけないし。あ、そうだ!」  私は「お笑いルーキー」のホームページの下から、「電子版購入」のボタンをクリックした。私は普段コミックは紙派なのだが、今回初めて、電子版を買ってみることにしたのだ。電子版なら本屋さんに行かずとも購入出来て、スマホで読むことができる。  まさに今日のような天気の日に、ぴったりだ。私は購入方法を選択して、プラウザで漫画を開いた。想像以上に簡単に買うことができて、私は思わず独り言を言った。 「電子版、めっちゃ便利じゃん。よし、さっそく読もう!」  私はベッドに横になると、スマホを操作して、漫画を読んだ。先ほど読んだ試し読みの第一話から、もう一度読み直した。やっぱり何度読んでも、面白い。 「よし、ここからが今日のメイン。楽しみだわー」  私は第二話を読み始めた。私は三十分ほどで全話を読み切った。私はスマホを机に置いて、ベッドにあおむけになった。私は天井を見てうなった。 「どれも面白かったけど、試し読みで読んだ第一話が、一番よかったな。試し読み用に、一番面白い話を冒頭にもってきたのかなあ」  私はベッドから起き上がって、窓の外を見た。いつの間にか、雨は上がっていた。「大風は急に進路を変え、町から離れて行きました」と、ラジオから声がした。  雨上がりの空には、虹がかかっていた。私は虹を見て、きれいだなと思った。「ま、楽しかったし、いいか!」と、私は笑った。                                   (了)
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