6体目 あざとパンダのぬいぐるみ

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「いやーまさか取れるかと思わなかった」  秀馬はまだ驚いている。ああいうクレーンゲームは取れないものだと思っていた。 「だよなー。いつも途中で人の目線が気になってやめちゃうんだけど秀馬がいてくれて助かった」  一千翔は大事にぬいぐるみを持ってきていたリュックにしまう。その様子はとてもかわいらしかった。ふいに、一千翔が立ち上がり秀馬の後頭部を触った。 「え、な、何……?」  秀馬が慌てて後頭部を触れば、一千翔の手は離れた。 「秀馬の寝癖立ってきてる」  一千翔はツンツンと秀馬の立ってきた寝癖を触った。 「まじかー……」  秀馬は寝癖を整えたつもりだった。直毛だからか、なかなか水につけても大人しくしてくれない。 「でも、俺好きだよ今の髪型。まぁ綺麗にしたかったらワックスつけたあとにケープつけな。もっさりすんでもっさり」  一千翔はケラケラ笑いながら秀馬にアドバイスをする。 「もっさりって何? それって良くなんの」  秀馬は一千翔に髪の毛をわしゃくしゃと弄られていた。秀馬の黒髪が無造作にかき乱される。 「でも秀馬が意識して髪の毛弄りだしたらクラスのみんなが明日は雨が降るってビックリするかもね」  一千翔はニヤリと笑う。 「それどういう意味だよ」  秀馬がすかさず突っ込めば、一千翔は「そのままだよ?」とまた笑った。 「見てな、明日からワックスつけるから」  このままじゃ終われないと思った秀馬は明日からワックスをつけようと決心した。 「お! 言ったなーけど校則でワックスつけるの禁止だから残念」  一千翔はヒラヒラと手のひらを返す。秀馬はそんな校則があったことを知らなかった。今まで髪型に関する校則なんて気にしたことがなかったからだ。秀馬は自分の容姿には無頓着だった。 「そうだよ、つか真面目すぎー怒られたことねぇの?」  一千翔はそんな秀馬が面白いのか笑いが止まらないようだ。 「だって、俺まじめだし」  秀馬はアピールするように胸を小突く。 「は? そうだっけ?? よく提出物、ちょこちょこ忘れてるのに?」  一千翔の言葉が胸に刺さる。 「そういうとこ見てるんだ。一千翔って」  痛いところを突かれた秀馬は苦笑いをする。まさか見られているとは思っていなかった。    
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