2体目 変に意識してしまう学校生活

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2体目 変に意識してしまう学校生活

 春休みが終わり、二週間振りに自転車で学校へ登校すれば毎年恒例のクラス替えが発表された。学ランを着た男子生徒とセーラー服の女子生徒が廊下に張り出されている名前を必死に探している。キャーと喜びながら飛び跳ねる女子達の脇をすり抜けて、秀馬は自分の名前を探した。  岸秀馬、岸秀馬……あ、あった五組だ。うわっ……マジかよ……。  岸秀馬と書かれた文字の後ろには『高萩一千翔』の名前があった。春休みにディスティニーワールドで会った以来、高萩とは一度も会っていない。まさか同じクラスになるなんて思いもしなかった。 「マジか……」  聞き覚えのある声に秀馬は横を見ると、隣には一千翔が立っていた。  一千翔と目が合うと、念押しをするかのように小さな声で「言うなよ」と脅される。普段聞かない低い声に秀馬は驚き、必死にコクコクと頷いた。一千翔は先に五組へと歩き出し、秀馬も少し距離を開けて歩く。すると後ろから誰かが飛びついてきた。 「秀馬! 同クラだなー!」 「友井!」  同じ陸上部の友井だった。肌は秀馬と同じく日焼けして、短く切りそろえた黒髪ショート。背丈は秀馬と同じぐらいの百七十前後だ。  友井と部活のことを話しながら歩いていれば五組についた。  黒板に座席表が貼り付けられており、席には番号が振られ名前順で記載されている。それを見れば、秀馬は一番窓側にある列の後ろから二番目、そして秀馬の後ろには一千翔がいる。  名前順的にはこうなるよなぁ……。  友井は秀馬との間に一つ列を挟んで三列目の教卓の前だった。 「うおっ……初っ端からセンターかよっ!」  絶望に打ちひしがれる友井に「どんまい」と肩を叩き自分の席に行けば、秀馬の後ろの席には既に一千翔が座っていた。  まぁ、普通に考えたらいるよな。変に意識しない、意識しない。  軽く目を瞑り、暗示をかけながら席に座る。座っても話しかけられない安心さから肩の力を抜いた瞬間、話しかけられた。 「なぁ、今日の提出物なんだっけ?」 「はひっ!」  急に話しかけられて驚いた秀馬は変な裏声で声を上げてしまった。 「いっちー、ビビらせるなよ。岸がぷるぷる震えてるじゃねーか」  一千翔の横に座っていたクラスメイトが茶々を入れると「別に提出物を聞いただけだし」と一千翔は口を尖らせる。 「春休み前に配られた英語のプリントと数学の問題集」  秀馬は振り返りながら答える。秀馬の口は緊張で引き攣っていた。 「ありがと」  一千翔は机の横にかけたリュックを漁り始めたので、秀馬は前を向いた。  何をビビることがあるんだ。高萩は提出物を聞いただけじゃないか。  秀馬は変に意識をしてしまい、どこか落ち着かない。一千翔は不服そうに秀馬の後ろ姿を見ながらため息をついた。
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