2体目 変に意識してしまう学校生活

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「あのさ、普通にしてくれていいから」 「へ?」  一時間目の授業が終わり、休み時間。秀馬が友井のところに行こうとすれば後ろから声をかけられ振り向いた。一千翔は頬杖をついて秀馬を見上げる。 「今まで普通だったのに急に岸くんが変な態度を取ると友達から何かあったの? って聞かれるの困る」 「あ、ごめん。気を付ける」  秀馬は一千翔の返事を待ち、固まった。一千翔がそっぽを向いたところで、会話が終わったことに気づき友井のところに移動する。教卓にもたれつつ、友井と新しい担任について話していれば友井越しに一千翔の姿がちらついた。  一千翔の周りには男女が入り交じるかのようにクラスメイトが集まっている。人懐っこく笑う一千翔を見て、秀馬は目が離せなくなった。 「でさー……秀馬、どうした??」  友井が上の空な秀馬に気づき、ブンブンと目の前で手を振った。 「あ、ごめん、なんだったけ」  秀馬は目の前で振られる手を見てハッと目を覚ます。慌てて友井を見れば、友井はあからさまに不機嫌な顔をしている。 「春休みから変だぜ、お前。タイムも伸び悩んでるし」  友井からの指摘に、秀馬は言葉を詰まらせた。 「うっ……」  ディスティニーワールドで一千翔との一件以来、得意な百メートルのタイムは伸び悩んでいた。タイムが縮まらないことを友井に突っ込まれ、秀馬は痛いところを突かれたと胸を押さえる。 「なーに、春休み中に彼女でも出来た?」  友井がニヤニヤしながら秀馬をつつく。紹介しろよー、と茶々を入れた。 「そんなんじゃねぇって」  秀馬は表情を読まれないように、友井を押しやる。  原因は、高萩のことだろうな……。  最後にもう一度だけ、と。一千翔を横目で見た時、目が合ってしまった。秀馬は目が合うとは思わず、慌てて目線をそらす。 わざとらしいか。  また一千翔を怒らせてしまうかもしれない。ドクン、ドクンと秀馬の心臓が忙しなく動いていた。
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