私の話

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 それから私はすぐに彼と結婚してそのまま引退した。  表向きにはライブ会場の惨状に心を痛めて、とても人前に出れる状況では無いという事になった。  彼、神志名幸一は呪術師の一族らしく、ある年齢に至るまでは山で修行の名目で暮らしていて、たまに要人の依頼に答えるという秘匿された一族だという。  大体は山の中で生涯を終えるらしいが、彼は外の世界を見てみたいと、ちょうど出てきた所を呪われている私に出会ったという。  私の容貌は傾国の美女に良く見られる貌らしく、意図せずに色々な人を引き付けてきてしまうらしい。  静かに暮らすだけならいいが、メディアなど大勢の人の前に出るとその分力が強くなり、狂う人も大勢でてくるから気をつけた方がいいと言われた。  こんな大事になる前に知っていたら、と思ったが仕方ない。  幸一と会えただけでもラッキーなのだ。  全ての縁を切ってもらってすっきりした私に注目する人は、誰も居なくなった。  素顔をさらして町を歩いても誰も私がフィンカのメンバーだったという事には気づかないようだ。  そのまま私と幸一は楽しく暮らしました。  と物語はそこで終わらない。  私は以前のように隠れてバックダンサーとして活動するようになった。  幸一の術で顔を印象に残らないようにした。  最初は印象の変わった私を見てプロデューサーは驚いていたが、安心したようだった。  そうやって私はひっそりと活動を始めた。  謎の美女とは言われるが誰も私の事を覚えていられなくなったから、平和だった。  そして子供が産まれた。  その子供に私の面影が全くない事を見てホッとして笑ってしまった。  だって幸一さんにそっくりなんだもの。  私はその子に陽一と名付けた。  私にとっての太陽。  そして5年後にもう一人子供が産まれた。  その子が産まれて目を見て悟った。  この子は私にそっくりだわ。  私と同じ、人を狂わせる。  密かに恐怖を覚えた。  看護婦がまだ産まれたばかりの子供のミルクを誰があげるかで争い、自分の子供を見に来たはずの他人の父親までその子に釘付けになった。  このままではまずい。  病室に無理矢理ベビーベッドをいれてもらい、同室で面倒を見る事にした。  家族だけになった所で私は幸一に縋りついた。   「私のせいよ。私のせいで、この子はきっと不幸になる」    私の散ってしまいそうな心とは反対に赤ちゃんは何も知らずにスヤスヤと眠っている。  幸一さんは、私を落ち着かせるように宥める。   「私と同じ酷い目にあうぐらいならば、産まなければ良かった」 「瑠奈、落ち着いて」    ハラハラと涙が落ちていくのを幸一さんが拭う。  そして、いつものように困ったように笑った。   「大丈夫だよ。僕はこの子の父親なんだよ。君と同じように、この子の事も僕が守る。それに、見てごらん」    眠っている赤ちゃんを起こさないように、陽一が赤ちゃんの指を触っている。  その手を反射的にしろ赤ちゃんは握った。  陽一は宝物をみつけたかのように私に向かって笑った。   「ほら、あの子も君の子を守ろうとしている」 「そうね。私があなたに守られたように、私もこの子を守って見せる」    赤ちゃんには美月と名付けた。  絶対にこの子は傷つけさせない。
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