私の話

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 と誓った事もあった。   私の心配とは裏腹に美月はとても図々しく、図太く成長した。  小学生ぐらいまでは善悪も分からずされるがまま俯いていて暗い子供だった。  いきなり知らない大人が連れ去ろうと襲いかかってくるのだ。  恐怖だっただろう。  私達はその度に美月を奪い去られないように守った。  そして決定的な事が起こった。  小学生の時に、同級生にいじめられた上に、虐めていた子たちの何人かが変死したのだ。  一瞬幸一が何かをしたのかと思ったが、彼は何も教えてくれなかった。    それから美月は変わった。  前髪を切って顔を出すようになり、一人で縮こまる事もなくなり明るくなった。  何か吹っ切れたのだろう。  逆に過保護になってしまったのは陽一だ。  自分が美月を守らなければならないという使命感から父親のマネをして呪術を学ぶようになってしまった。  幸一が血筋なのか伸びがいいと言っていたが、性格が暗くなり家に閉じこもって研究ばかりをするようになってしまった。  こんなはずじゃなかったのに。   「だから言っただろう。君は心配し過ぎだって」 「それでもまさか陽一があんなに根暗になるとは思わなかったわ」 「そうかな?僕も小さい頃はあんな感じだったよ」    知らなかった意外な事実に驚いた。  子育ての為に辞めていたバックダンサーの仕事を、幸一のすすめもあってまた復帰していた。  最初は子供二人を残して行くなんて不安でたまらなかったが、陽一が家事などをしていて上手く生活しているようだった。   むしろ、たまに帰ってくると幸一も交えた家族三人で物騒な話をしていて、時々ついていけなくなる。  死体を埋めたとか、新しい呪術を開発したとか、地下に犯罪者の奴隷が居たとか……  それって犯罪じゃないの?  と突っ込みたかったけど、美月を守る為なら仕方ない。  と真顔で返されてしまった。  本当に、どこで教育を間違ったのだろう。 「そういえば美月CM見たわよ」 「母さんの真似をしてみたんだ。だけど大変だったんだよ」  得意そうに美月が言うが、今回は大変だったみたい。  プロデューサーにも後で謝っておかないと。  懐が深い人が笑って許してくれそうな気もするけど。 「大変だったんだよ。あの彼についている縁を全部切って、美月に繋いで、全てが終わったらまた切るとか。父さんが居なかったら絶対無理だったよ」    いつもより目の下の隈を濃くした陽一が言う。 「はは、まだまだ衰えてないからね」 「今回の事で思ったけど、もっと僕勉強するよ」  そんな事よりも大学で勉強をしてほしいと私は思う。  美月が連れ出された日、陽一が泣きながら電話をしてきたみたいで、幸一の焦った顔を久しぶりに見た。  何でも美月が家からも引きはがされ、光と呼ばれた彼も傾国の相を持っていて容易に近づけなかったという。  そこで考えたのは、逆に彼の望んだように美月を大々的に注目させようという方法だ。  私と同じだったら、美月と一緒に居るだけでも彼は嫉妬し、隙を見せるだろう。と。  それと同時に陽一は少しずつネットも使い光の求心力を下げ、わざと美月だけに注目が行くようにしたそうだ。  プライドの高い彼は許せなかったのだろう。  そこに隙が出来た。  そして、私のトラウマを食らわせたらしい。  酷い事を考えると思ったが、最初に脅迫してきたのは向こうだから。と家族の誰も躊躇はなかったらしい。  美月に心酔しているという奴隷も快く引き受けたらしいし。    当の美月も私と違い、目の前で人が死んでもあっけらかんとしている。  心配して損した。  美月は二人に縁を切って貰った事により、芸能界からすっぱり引退した。  誰も美月がアイドルだったなんて覚えてないだろう。  そして、明日からは今まで通り普通に高校に通うという。   「頭が痛い」    ポツリと零すと、幸一が心配そうに背中をさすってくれる。   「疲れてるなら早く休んだ方がいいよ」 「あ、温かいものでも用意するよ」 「母さん、仕事し過ぎ」    陽一がホットココアを入れてくれて、美月が憂いなく笑っている。   「ありがとう」    まあ、幸一が守っている限り子供達の犯罪行為が見つかる事はないでしょう。  もし捕まりそうになったら、私と同じように全てを切って逃げ出せばいいのだもの。  家族が無事ならそれだけでいい。  私たちを貪ろうとするような人たちはいらない。  私は幸せな家族を思って笑った。
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