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プロローグ
もう時間がない。ダイイングメッセージを打つなら今しかない。キーボードが血ですべる。さっき刺された腹から、命が流れ出している。もう時間がない。
俺は犯人の顔を見た。だけど奴は知らない奴だった。彼の名前はわからない。だから、いったい彼が誰なのかがわからない。だけど、奴が例の連続猟奇殺人事件の犯人なのはわかる。手口が一緒なんだ。もう十三人も殺してる。俺は十四人目だ。止めないと十五人目の犠牲者も出てしまう。無差別ではなかった。ちゃんとした理由があった。リストがあったんだ。
もうだめだ。俺の推理を全部書ききるには時間がない。だから例のAIを起動してほしい。そうだよ。あの小説を書くAIだ。そうして、今まで起きたことを全部文字にして入力して、俺を主人公にして小説を書かせてくれ。
あのAIには今まで俺が書いた小説と、日記を大量に学習させてある。考え方や行動パターンは俺とほぼ同じのはずだ。だから、推理パターンも俺と一緒のはずだ。情報さえ与えれば、あのAIだってこの殺人事件の犯人を特定できるはずなんだよ。
@*/これより下はAIに文字が認識されません
管理者memo:
……というダイイングメッセージを受け取ってしまった。非常に困った。
とはいえ、彼の遺言を無碍にするのは気が引ける。
なので、阿賀田AIを起動する。
つまり、こういう話だ。小説を書くAIに、現実世界で起こった未解決事件を、推理させてみよう。
恐らく、人間というものはもともと推察能力にたけているのだ。例えば、こういうことだ。
ここに背中を刺された死体がある。血濡れのナイフを持った男が出てきた。犯人は誰か?
物語に探偵を登場させる。物語の途中に、現在見つかっている証拠や容疑者を登場させる。
そうやって、AIに物語続きを書かせる。
上手くいけば、AIはシミュレーションという形で、難事件を解決してくれるかもしれない。
してくれないかもしれない。
物は試しだ。まずは動かしてみよう。
だけど、いきなり本番はまずい。まずは試しに、何か創作の話を解かせて見せよう……そうだな……。例えば……
@*/コメントアウトここまで
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