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「しばらく来られないそうです」
食堂で顔を突き合わせている俺たちに、従業員が無慈悲に告げた。
「来られない!?」
「実は、ふもとの村の除雪車が故障してしまったようなんです。この雪ですし、警察の車両が来るのはしばらく後になるかと……」
「じゃ、じゃあ救急車は!?」
「同様だそうです」
「あるあるですね」
■■■が後ろでコーヒーを飲んでいる。優雅である。
「本当に……本当に、俺たちの中に、犯人がいるって言うのか!?」
市村が震える声で言った。
「あ、そこの従業員さん三人は除外していいと思いますよ。なぜなら~?」
■■■がムカつく声で、俺に話を振ってくる。俺はムカつきながら、対応することにした。
「……彼女たちは、朝に出勤してきたんだろう。出勤してきたとき、この宿の入り口には雪が積もっていた」
「はい。雪かきをしないと入れませんでした」
「ならば彼女たちに犯行は不可能だ。容疑者から除外していい」
「容疑者……って」
牛島がイラついたように立ち上がった。
「お前は探偵だろうけど、ただの一般人だろ!? 捜査権はないだろう。まさか犯人あてゲームでもするつもりか?」
「お、俺はそんなつもりじゃ」
俺はあまりの剣幕にやや引きながら弁明した。俺だって正直、まだ頭が追い付かない。江藤が死んでしまったこと。そして、いつものメンバーの中に犯人がいるなんて。
「小説じゃないんだぞ、真面目にやれ!! 警察が到着するまで、大人しくここで待ってるんだ!!」
「あ、ああ、そうするよ。そうするつもりだよ……」
俺が言うと、■■■が誰にも聞こえない小さな声で、こういった。
「小説ですよ」
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