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慌てたのはなぜか小倉だった。
「お、おい。さっきのは冗談だって!」
■■■は、さあ始まりましたとばかりに、椅子の上でポップコーンを片手に映画を見る観客のポーズをしている。
「……そんなことを言い始めたのは誰だ? そこの■■■か?」
牛島は不愉快そうに、俺を見た。市村はぎょっとして、俺と牛島を交互に見ている。
「江藤の父親と母親を殺したのもお前だな、牛島」
俺がいうと、牛島はピクリとも動かなくなった。まるで彫像のように。
「何の証拠があって」
牛島が唇だけを動かして尋ねてきたので、俺はこう答えた。
「たった今、証拠ができたところだ」
「……どういうことだ?」
「市村。お前、さっき牛島と離れで何をしてきたんだ?」
「な、何って……」
俺が尋ねると、市村は答えた。
「もう一回検死をしてきたんだ。やっぱり江藤の体には何か所も刺し傷があった。普通じゃ考えられないから、睡眠薬が盛られたのかもしれない、でもたぶん警察が来れば全部わかるだろう……って」
「他には?」
「他? そうだな。凶器には鋭い刃物が使われているから、犯人は返り血を確実に浴びたはずだ。洗ったにせよ、コートを捨てたにせよ、それも警察が来ればわかるだろう、って話だった」
「そう、この事件、全て警察が来れば解決してしまうんだ」
俺が言うと、■■■が不安そうに尋ねてきた。
「あの、それって、探偵の存在意義を全否定してません?」
「だから、犯人は証拠を全て消すことにしたんだよ」
「証拠を全て消す!? そんなマジックショーみたいなこと、出来るはずないだろ」
小倉が言うので、俺は答えた。
「江藤の母親の事件を思い出してほしい。彼女はどうやって死んだ?」
俺が言うと、新聞記者の市村が答えた。
「確か火災で……って、まさか」
「そう。牛島、お前。さっき江藤の部屋に火をつけて来ただろう」
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