プロローグ

1/1
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ

プロローグ

 もう時間がない。ダイイングメッセージを打つなら今しかない。キーボードが血ですべる。さっき刺された腹から、命が流れ出している。もう時間がない。 俺は犯人の顔を見た。だけど奴は知らない奴だった。彼の名前はわからない。だから、いったい彼が誰なのかがわからない。だけど、奴が例の連続猟奇殺人事件の犯人なのはわかる。手口が一緒なんだ。もう十三人も殺してる。俺は十四人目だ。止めないと十五人目の犠牲者も出てしまう。無差別ではなかった。ちゃんとした理由があった。リストがあったんだ。 もうだめだ。俺の推理を全部書ききるには時間がない。だから例のAIを起動してほしい。そうだよ。あの小説を書くAIだ。そうして、今まで起きたことを全部文字にして入力して、俺を主人公にして小説を書かせてくれ。 あのAIには今まで俺が書いた小説と、日記を大量に学習させてある。考え方や行動パターンは俺とほぼ同じのはずだ。だから、推理パターンも俺と一緒のはずだ。情報さえ与えれば、あのAIだってこの殺人事件の犯人を特定できるはずなんだよ。 @*/これより下はAIに文字が認識されません 管理者memo: ……というダイイングメッセージを受け取ってしまった。非常に困った。 とはいえ、彼の遺言を無碍にするのは気が引ける。 なので、阿賀田AIを起動する。 つまり、こういう話だ。小説を書くAIに、現実世界で起こった未解決事件を、推理させてみよう。 恐らく、人間というものはもともと推察能力にたけているのだ。例えば、こういうことだ。 ここに背中を刺された死体がある。血濡れのナイフを持った男が出てきた。犯人は誰か? 物語に探偵を登場させる。物語の途中に、現在見つかっている証拠や容疑者を登場させる。 そうやって、AIに物語続きを書かせる。 上手くいけば、AIはシミュレーションという形で、難事件を解決してくれるかもしれない。 してくれないかもしれない。 物は試しだ。まずは動かしてみよう。 だけど、いきなり本番はまずい。まずは試しに、何か創作の話を解かせて見せよう……そうだな……。例えば…… @*/コメントアウトここまで
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!