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「彼はね、以前私を殺そうと乗り込んできた勇者パーティーの一人だったんだ。だけどエルフの彼は人間の勇者に付き従うのに嫌気がさして、私の目の前で勇者を殺してしまってね。私もかなり驚いて『どうして殺したんだ?』と思わず聞いちゃったよ。そしたらなんて答えたと思う?『魔王を討ち取ったってドヤ顔されるのが死ぬほど嫌だった。』ってさ。それで、俺自身も殺してほしいと懇願されて、何度か試してみたけど全然死ななくてね。ほとほと困ってると、ニシ君が記憶を消したいと提案してきて、私とニシ君の二人で合同術式を組んで記憶を封印したんだ。二人ともが同意しなければ、記憶が解放されることは絶対ない。そういう魔法をね、作ったんだ。消した記憶は『勇者との日々』でその日々の中で編み出した魔法については一緒に封印されたようだよ。だから魔法は彼自身が再び解き明かしていく必要があるね。」
「そう、だったんですね。いやはや、恐ろしいはなしです。できれば聞かなかったことにしたいです。」
「ははは。それじゃあ記憶消してみる?なんて冗談は置いといて、今日の報告はこれくらいにしておこうか。わざわざすまないね。」
魔王様が話を切り上げようとしたとき、ドアが開き、ナカオーが謁見の間に入ってきた。
「おいっす魔王様。あら?ミナミンの報告中でしたか?」
「いや、今終わったとこだ。何か用か?」
「そうです。奥さんから、魔王様の忘れ物を届けてほしいと頼まれてしまいまして。これがそうです。」
ナカオーは段ボール箱を魔王様に手渡す。
「こんな小包をもらった記憶はないんだが、開けてみようか。………え、ナニコレ。」
小包を開けると、人の生首が一つ入っていた。
「王国軍幹部の首だそうです。和平交渉の手土産として、勝手に送ってきたようです。」
「ええー、いらない。」
「ですよねー、人間が考えることはよくわからないです。あ、奥さんから伝言です『家庭ごみで出せないから、産廃扱いにしてそっちで処理をお願い。』だそうです。あと通学前の娘さんが小包を開けたそうで、『キモい趣味作らないで』とちょっと怒ってました。いらん風評被害ができたみたいですね。」
「よし、さっさと王国滅ぼすぞ。君たち、尽力したまえ。」
「「はい!」」
和平交渉どころか、魔王様の殺意がマシマシになったとさ。
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