Tokyo Grayzone トーキョーグレーゾーン

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「おはよーございまーっす」  ツーブロックの髪型にパリッとしたスーツを着た男性が、気の抜けた挨拶をしながら、私たちの横を通り過ぎて行った。名前を忘れてしまったけど、たぶん営業の人だ。私たちが「おはようございます」と挨拶を返す頃には、彼は既にフロアの中央の円テーブルに腰掛けている女性の横に座っていて、何やら楽しそうに話していた。  この会社のフロアは目がチカチカするくらい白い。壁も一面白色で、インテリアもほとんど白で統一されていた。所々に置かれた観葉植物だけが、申し訳程度に白いオフィスに彩りと与えている。  ここは、できたてホヤホヤの、いわゆるベンチャーに分類される会社だった。そのせいか、務めている社員の年齢層も若めだ。  一部を除いて、席はフリースペースで、部屋の中央部分には、会社のロゴが刻まれたプレート型のオブジェが立っている。そのまわりには円テーブルが5つ並んでいており、その外側には、長方形のテーブルが一定間隔に並んでいる。毎朝、出勤したら社員の殆どはまず自分の席の確保から仕事が始まる。  しかし、コールセンター担当の私たちは別だ。私たちは部屋の奥にある、フロアの端のパーティションで囲まれたスペースを目指した。  コールセンターといっても大した設備はなく、大きな白い長方形のテーブルが3つ、それぞれのテーブルは計6人が座ることができるようになっていて、それぞれの席がクリーム色の仕切りで区切られている。この一角は、窓がないうえ、高い仕切りに囲まれているので、少し薄暗い。 「それじゃ、またお昼休みに」  岡崎さんはそう言って、スペースの中央にある自席へ向かって行った。私の席は壁側の奥の席だ。椅子を引いて腰掛けようとしたところで「おはようございまーす!」と元気な声が聞こえた。アルバイトの山下くんだった。山下くんは肩が左右に揺れる特徴的な歩き方をしながら、私の隣までやって来ると「おはようございます! 浜里さん!」と白い歯を出して笑った。 「おはよう、あれ、山下くん、今日はシフト早いんだね」 「なんか、設備点検?があるらしくて、今日は養成所休みなんすよ!」
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