有罪判決

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「……そっか。じゃあ難しいか」 「暑いし思いっきり飲みたいんだけどねー。残念ながらしばらくダメかも。せっかく誘ってくれたのにごめんね」 「いや、いいんだよ。美織さんのためなら何度でも当たって砕けるよ」 「ほんとごめんね何度も砕いちゃって……あ、ねぇ羽留ちゃん、今日のお昼外で一緒に食べない? 最近できたあの定食屋行ってみたいんだよね」 「え、うん行く!」 普段はそれぞれ社員食堂で昼食を取っているが、時々こうやって一緒に外食をすることもある。 会社の近くに美味しいラーメン屋があるので、外食する時はそのラーメン屋に行くことが多い。社食のラーメンは麺がゴム的であまり評判が良くないのだ。 「紬ちゃんもどうかな?」 「紬は同期の子と一緒に食べてるからなぁ。今日は二人でもいい?」 「もちろん。じゃあお昼ね」 自分の席に着き、パソコンを立ち上げたりキャビネットを開けたりして仕事の準備を進めていると、出入り口のドアから悠也さんが入ってくるのが見えた。 同じ営業部の営業課と営業事務課は三階のフロアにあり、しっかりしたパーテーションで仕切られていて互いを見通せない造りになっている。 今まで意識したことはなかったのだが、あの件のせいでなんとなく悠也さんを目で追ってしまう。ワイシャツの捲られた袖からチラッとホクロが見えた。 「おはよう羽留」 「あ、紬いたのか。おはよう」 「眉間のシワすごい」 「えっ! ……二日酔いかな」 「もう三日経ってない?」 紬はケラケラ笑いながら自席に向かう。 一方、美織さんは静かに席に座って何か本を読んでいた。 再三言うが、美織さんはとても素敵な女性だ。結婚前は男性社員の争奪戦だったという噂も聞いている。 私が入社した三年前、美織さんは私の教育係として仕事やその他色んなことを教えてくれた。 そして実は、私は美織さんの仕事姿に密かに憧れている。背筋をピンと伸ばした綺麗な姿勢でパソコンのキーを打つ姿がちょっとピアニストっぽくて素敵なのだ。
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