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居酒屋の座敷の隅でどんよりしている私。
フルネームは井上羽留だが、下の名前が呼びやすいためか慣れた人にはほとんど下の名前で呼ばれる。会社の上司ですら下の名前を呼び捨てだ。
私たちの勤め先は電機メーカーで、私は入社四年目の微妙な立場。会社は大した規模ではないが、極端な残業や休日出勤はなく、福利厚生もしっかりしていて居心地が良い。
目の前に座るのは同じ営業事務課の一つ後輩、石川紬。なかなか気の強い子で、一応先輩である私への扱いもなかなか雑。
仕事では先輩でも、仕事を離れれば私が後輩のような立場になる。紬の方が背が高いのもそうなる理由なのだろう。
「ねぇ羽留、さっきから大丈夫なの? 急に電池切れじゃん。お酒全然減ってないし」
「え、いやごめん。やっぱ疲れてるのかなぁ……」
「だから言ったじゃん。今日は早く帰ろ。私はガッツリ飲ませてもらうけど!」
せっかく仲の良い同僚との楽しい飲み会なのに、さっきから全く気分が上がらない。直前にあんな場面を見てしまったせいだ。
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