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私の見間違いでなければ、あの男性は営業課の秦野悠也さん。私と同じ営業事務課の先輩、秦野美織さんの旦那さんだ。
紬と私は美織さんと仲が良い。特に私は昼休みに美織さんと二人で過ごすことも多く、彼女の可愛らしい外見と穏やかで優しい性格、そして周囲への気遣いの細やかさに同じ女性として惚れている。
そんな大事な人の一大事とあっては目の前の酒にも集中できない。さっきから胸の辺りに不快な黒い渦がウズウズしてアルコールを受け付けないのだ。
とはいえ、あまり紬に気を使わせたくないので、とりあえず一本だけ皿に残った梅きゅうりを齧歯類みたいにポリポリ齧って笑いを誘った。
「あはは! なにそれハムスター? 意外と元気じゃん」
「そうよ。梅きゅうりうめぇ」
「しょーもな! ねぇ食べられそうならポテトも頼もうよ。豆腐ときゅうりじゃカサカサになっちゃう」
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