この恋は陽炎

1/16
27人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
あたしは2年前の夏、高校時代に憧れた彼と再会した。 ひと回り以上年上の彼は、知らない間にバツイチになっていた。 「もう2度と誰とも結婚しねーよ」 そう言う彼にバツイチの理由は聞かなかったけど、よほど結婚生活が辛かったんだと思った。  だからセフレでいい。  彼のそばに居られるならそれで。 そんな安っぽい感情だった。 だってあたしは、そうでもしないと彼の隣に居られなかったから。 「好き。大好き」 「……ああ」 好きなのはあたしだけ。 返ってくる言葉はそれだけ。 それでもベッドの中の、キスと彼の温もりに、あたしは幸せすぎて。 いつか、その内彼を本気にさせてみせる。 あたしを生涯のパートナーって、最後の女だって認めさせてやるって。 なんて思っていた。 馬鹿だよね。 何度も身体を繋げても、心が繋がったことなんて1度もないのに。 彼はあたしをセフレ以上に見たことがないのに。 だから決めたの。 この夏に、暑い季節に別れようって。 だって寒くなったら、身も心も凍えて別れられないから。 「あたし、別の人と付き合う。だから、ジンとは別れる」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!