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 今日も、日当たりのいい街を一匹歩く。立派な煉瓦作りの建物に、どこからか漂うパンの香り。にゃんと鳴けば現れる美味しい食べもの。幸せに包まれながら歩いていると、角を曲がったところで何かにぶつかった。  僕より少し大きい筒が、ぐらぐらと揺れ倒れかけている。驚いて逃げようとしたが、間に合わなかった。飛び出してきた真っ黒な水が僕にかかる。しかも驚いて逃げようとしたせいで、つるりと足を滑らせてしまった。  一体何が起こったのだろう。鼻をもぐような臭いで全身がコーティングされている。とにかく臭いをどうにかしたくて、本能的に水飲み場へと足が向いた。  水飲み場は、雨が降ると色々な場所にできては消えていく。近いところから回ったが、水は中々見つからなかった。    とある細い一本道を進み、日の差さない世界に入る。  この街には二つのエリアがあり、道を境に反転したような土地があった。暗くてじめじめしたところだ。今は分からないが悪臭だってすごい。このエリアは、近付くだけで漂う臭いを持っていた。  建物もボロボロだし、見かける人もボロボロ。怖い目の人が多いせいで、あまり好きな土地ではない。しかし、今は場所を選んでいる場合ではなかった。  最後の水飲み場は、ちゃんと生きていた。一直線に突入し、浅い水をまとうよう転げ回る。転がった後の水は少し濁った。  しばらく転げて、やっと臭いを薄くする。仕上げに毛繕いを――と毛を見た瞬間、驚いた。真っ白だった毛は、信じられないほど黒くなっていた。
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