ナナの結婚(1)

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ナナの結婚(1)

 猫のナナは、1人の身勝手な男によって遺伝子操作で生み出され、人間と同じようなに言葉を喋り、人間と同じ知能を持ち。東京でちょっとした名医として名高い木村動物病院の院長、木村(スズ)の自宅の玄関先でナナが倒れていたところを鈴に助けられ。記憶を一部なくしながらも、ナナの能力を生かすために動物カウンセラーとなった。  ナナは、動物カウンセラーとしてその存在を隠しながら、動物たちの声を聴き。食事を摂らない、元気がない、病気がちなど、人間による主にストレスが原因とされているストレスの原因を取り除いてきた。飼い主たちは反省をし、そんなことが原因などと驚いたり、さまざまだった。  どうしてナナの存在を隠すのか、ナナの存在を知る者は限られている。その理由は、ナナを動物の研究材料にされないためと、ナナを見世物にさせないため。ナナは見世物ではない、大事な鈴たちの家族だ。  ナナの存在を知る者は、鈴の両親、木村動物病院の従業員たち、鈴のいとこの長谷川まさみの家族たち。それと、何を考えているのかよくわかないところがあるが、ナナたちの心強い味方、鈴が通っていた大学の角野守。角野教授は、去年大学を定年したが、あだなとして角野教授と呼ばれている。そして、鈴のファンクラブ31人たち。リーダーは、31人目の角野教授。本当は30人限定だったはずだったが。  残すは、鈴の父親の幼馴染の原西貴志。原西は、東京第一動物病院の元院長だが、次男である原西徹が非常に身勝手な想いでナナをこの世に誕生させた。あらゆる手段を使い、10年で5000匹の猫たちを研究材料に使い、父親の動物病院のお金を横領させ、協力者数名を逮捕、原西の次男も逮捕された。  ナナは鈴のところに来て、いろんなことがあり、欠落した記憶を取り戻し、その記憶と向き合い今を生きている。ナナは言う。ここに来て本当によかった、今幸せだよ。この表現、なんか人間だな。  ナナは、人間のように喋ることができる。偏見ではないが、女性だからなのか、お喋りが大好き、といっても人間と喋ること。  ナナと鈴が出逢って半年が過ぎ。ナナを知る者は言う、あいつのメンタルは凄すぎると。そんなナナはまに思うことがある。  鈴の自宅のリビングのソファーにナナと鈴が並んで座っている。2人は窓の外を眺めていると、ナナの心の声がダダ漏れしていた。 「私は猫なの!? 人間なの!? それとも私は猫娘!? それは妖怪、私は妖怪ではありません。じゃ、私は猫人間なの!?」 「何それ、バカじゃないの!? たかが人間の言葉を喋れるくらいで、たかが人間と同じ知能をもってるくらいで、それがどうたっていうの!? 同じことを言わせないでよね!? あなたは、れっきとした猫、私の妹、何か文句がある!?」 「ありません、けど、バカは言い過ぎ、そんなことだから結婚できないんじゃないの?」 「はぁ!? それどういう意味!? 言っとくけど、私は結婚したくないからしないだけなの」 「えっ!? そうだっけ!? お母さん、聞こえた!? お姉ちゃん、そう言ってるけどいいの?」  キッチンで昼食の準備をしている鈴の母親は、鈴に対し、あまり結婚しろとは言わない、父親もそうだった。 「いいんじゃないの!? 本人がそれで幸せなら」 「……だったら、お姉ちゃん、瞳ちゃんはどうなるの?」 「瞳!? なんで、そこで瞳がでてくるの!?」 「……」 「黙ってないで、説明してもらいましょうか? ナナちゃん?」  口が堅いナナだったが、つい口が滑ってしまった。早川副院長にあのことは内緒だからねと、口止めされていたのに。
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