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Episode 9 SEX UPの懲りない奴
シティ、特に警察ではプラグ型をP、カプセル型をCと呼称している。これらを化粧用のポーチいっぱいに詰め込んで持っており、シティの中心、繁華街で売り捌こうとしていたところをパトロール中の警官が見つけて連行したらしい。
「歳は28の女性、本人は観光客だと言っている、パスポートも日本の物だ。そこまでは何とか聞き出せたんだが」
ペドロの話しをひと通り聞いてからケイは取り調べ室の1番に入り、ペドロが後に続いた。入って来たケイを見たその日本人観光客だという若い女性は、ケイを見るなり椅子から立ち上がって「あなた、日本人?」と切羽詰まる勢いで聞いて来た。ケイは「I'm going to ask you a question, so shut up!(こっちの質問が先だよ、黙ってな!)」と冗談半分で脅して見せた。その流暢な英語とケイの身なりからして女性は日系、もしくは中国系の女刑事だと思ったらしい。
「で、あんた観光客ってのは本当なの?」
「やだ、やっぱり日本人でしょ?」
「あんたさ、街中でこんな物持ってたらヤバいとか思わなかったわけ? 中身が何だかわかってんの? これ、ドラッグだよ」
「誤解よ、私は頼まれただけなの、信じてよ!」
「誰に頼まれたのさ?」
「たまたま行ったクラブで知り合った黒人男性に……これ売れば旅行の土産代になるとか言ったんだと思うけど、英語わからないから」
「土産代どころか、これ全部売り捌いたら世界一周旅行してもお釣りが来るよ。で、そいつに金を払ったの?」
「払ったわ、その分の倍にはなるから、みたいな事を言ったんだと思う」
ケイはペドロに女性の話しから経緯を訳して説明した。
「そいつはどこのクラブだ?」
「このお巡りさんがどこのクラブか、だってさ」
「中心街よ、〈SEX UP〉とか言うクラブ……」
「チッ、ビリーDとかいうあのクソ野郎か!」
ケイが太腿に一発ブチ込んだ黒人男だ。ペドロにビリーDの話しをする。
「あいつ、太腿じゃなくて脳天に弾をブチ込んでおけば良かったよ」
「はてさて、奴らはどっちから仕入れているかだな」
ペドロの意味深な言葉を聞いたケイがペドロと顔を見合わせた。
「わかった、わかった、調べて来るよ」
ケイがペドロの考えを読んだかのように投げやりに答えた。面倒くせえな~と、ぼやきながら部屋を出て行くケイを見た女性が不安そうに声をかける。
「ねえ、私はどうなるの?」
「Death penalty!(死刑だよ!)」と、中指を立てて声を張り上げて出て行くケイ。
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