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Episode 1 仕掛けてきた男
「話しがある、NOって言葉は吐くなよ」
男は周囲から見えないようにケイの脇腹に拳銃を突きつけていた。
「尋常じゃないね……私に銃を突きつけて来る人間は二種類だ。一つは何も知らない馬鹿、もう一つは答えを知っているが敢えて仕掛けて来る馬鹿、まあ、いずれにせよ馬鹿なんだけどさ」
シティPDの制服の男はギョっとする。ケイの脇腹に突きつけていた銃とは反対側の自分の脇腹がいつの間にか盗られていたのだから。しかもケイが握るベレッタの銃口先端はあきらかに並行ではなく、上段に傾いている。この角度で銃爪を弾かれれば少なくとも主要な内臓をかすめる事になる、それだけで致命傷となる弾道だ。
「こ、こいつ……」
「あんたはどっちの馬鹿だろうね。どうしたお巡りさん? 話しがあるんだろ? 聞くよ」
ケイは男の表情を見ながらニヤリと口角を吊り上げる。
「……負けたよ、噂通りだな」
男はそう言うと拳銃を収めた。代わりに胸ポケットから紙片を取り出してケイに差し出した。
「そこに連絡をくれ、詳しい事はまたその時に」
「随分一方的だね、銃で脅して次は連絡をよこせか……ハイ、わかりましたと私が連絡するとでも?」
「無礼は謝る、だが、あんたは必ず連絡してくるさ」
男はそう言って白バイの方へ歩いて行きバイクに跨がるとエンジンをかけた。立ちすくむケイの横を何事もなかったかのようにバイクで走り抜けて行ってしまった。
「チッ、なんだよ、ありゃあ」
ケイは男に渡された紙片を見る。電話番号だけが記されていた。
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