Episode 5 カルテルからの刺客

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Episode 5 カルテルからの刺客

 シティにある旧メキシカンカルテルの残党たちがたむろしているメキシコ料理店。タコスの匂いに混じりテキーラの強いアルコール臭が鼻をつく。奥のテーブル席にいる四人の男たちはさっきから落ち着かない様子で店の入口をジッと見つめている。  入口のドアが勢いよく開いて一人の男が飛び込んで来た。テーブル席の四人が立ち上がる。 「来た、ボスの到着だ!」  入口から飛び込んで来た男はドアを押さえて後から入って来る者たちを迎える。最初に入って来た男はアロハシャツの小柄な男だ。クチャクチャとガムを噛みながら店内の様子を隅から舐め回すように視線を流す。他の一般客たちは見て見ぬふりをしている。それがこの店の流儀だからだ。そうでなければ災いが起こりそうな店にわざわざ足を運んだりはしない。  アロハシャツの男に続いて入って来たのは大柄の男だった。無表情のままズカズカと店の奥に入って行く。その後に入って来たのがボスと呼ばれる旧メキシカンカルテルの残党を率いるパヤノという中年の男だった。一緒に入って来た連れの男に粗相が無いよう気を使っているのがわかる。その連れの男の目つきは暗いが、身体中から殺気がうかがえるくらい周囲を黙らせる雰囲気を醸し出している。 「ささ、こちら奥の方へ」  四人の男たちは呆然と立ち尽くしていたが、「ボサっとしてんじゃねえ! テーブルに酒と料理をサッサと運べ、馬鹿野郎!」と、パヤノの一声で慌てて散り出した。  テーブルにはアロハシャツの男、大柄の男、そして異様な雰囲気を醸し出してる例の男が席についた。四人の男たちが厨房の奥から次々と酒と料理を運んで来る。テーブルの上にはテキーラのボトルが並び、ショットグラスが四人分置かれたが、大柄の男はテキーラのボトルを鷲掴みにするとゴクゴクと喉に流し込んだ。まるで水を飲むように。 「オイオイ、兄弟よ、まだ乾杯してねえだろ、行儀悪いぜ」  アロハシャツの男がヘラヘラした口調で大柄の男に言った。 「喉が乾いてんだよ、このシティとかいう街は国と同じくらい空気が乾燥してねえか? ええ、ロベルトよ、クソが!」  ロベルトと呼ばれたアロハシャツの男はヘラヘラ笑いながら、「どこがだよ、ナザレス。むしろ湿ってるじゃねえか」と返した。ロベルトはナザレスという大柄な男に続いてテキーラをショットグラスに満たすと一息にグイッとあおった。  勝手に飲み出した二人をよそに、ボスのパヤノはテキーラのボトルを隣に座る無表情の男に勧める。 「ささ、二人もやり出したし、こちらも、オーランドさん、さあどうぞ」  パヤノがオーランドと呼んだ男は黙ってショットグラスを手にした。パヤノがそこへテキーラを注ぎ、続けて自分のグラスにも注ぐ。グラスを掲げ、乾杯の真似事をして一息であおるパヤノ。オーランドはグラスには口をつけず、そのままテーブルに置いた。 「で、ウチのブツを盗んだ裏切り者のアメリカ野郎は何時に空港へ着く?」 「午後の5時30分には着く予定です、そっちの方は心配いりません、キッチリ計画を練ってますんでね。既に移送車輌を運転する警官も買収済みですからスンナリとそちらに引き渡せる手筈です」
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