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放送委員は届いたお便りを嬉々として読み上げる。
『ペンネーム・グレイさんからのお便りです』
“皆さんは寄生型エイリアンを知っていますか?
……宿主に憑りつき、最後は自分が宿主の身体をのっとってしまうというアレです。
その寄生型エイリアンが最近巷で増加してるとか。
しかもそのエイリアン、寄生の範囲が広いです。
その人自身を器にするだけでなく物を媒介して持ち主を操ることが出来るんです。
エイリアンは物に化けて持ち主になる人を探しています。
例えば、エイリアンがTシャツ型なら、そのTシャツを着た人の心をのっとるとか……
ちなみに私の友人はTシャツ型エイリアンに寄生されました……”
『これは怖い。怖いですね~』
きゃーっと怖がる読み手の放送委員は楽しそう。
『ちなみにのっとられたご友人、グレイさんが漂白剤をぶっかけたら大人しくなったとか。しかしその後色落ちしたように表情が乏しくなったそうです。これは無事だったのか……?』
「……」
『しかしその辺に落ちたTシャツを着る人がいるのでしょうか? 皆さんも落ちてる衣服や物を拾って自分のものにしないように! それでは明日の放送でごきげんよう~』
「……」
「……」
俺は勘違いしていた。
染井も勘違いしていたんだ。
彼の着る“それ”は気分によってTシャツの色が染まるのではなく、Tシャツの色が変わる色で着た者がコントロールされてたってこと。
寄生型エイリアンによって。
漂白してしまった。
「……」
教室に戻ると教室内はおつやのようなムードに包まれていた。
たぶん昼の放送を聞いて全員思う節があったのだろう。
(いろいろと)真っ白になった染井を連れて帰還した俺を見たクラスの連中はうつむき気味に「おお……」「ど、どんまい」と力ない声で俺たちを励ましてくれた。
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