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「っせえな。仕事しに来たんだよ、今日は」
「……だから大雨かよ」
バケツをひっくり返す、とはこういうことを言うのだと天が教えたくなったのか。何故だか急に土砂降りとなり。
「荻野、電話」
「はい、荻野法律……あ、木村さん。え?は??」
何やら荻野が喋っている間に、ハヤセとシンブリードは何やら横文字早口であれこれ話し始めた。
ツー、ツー、ツー。
電話が終わったらしい荻野に向き直ったシンブリードがハヤセをソファに押し込みつつ。
「何だった」
「やめるんだと。事務の女のコ」
「……ご愁傷様。まあ、正解だろ。こんないつ潰れるかわかんねーような個人事務所。それに、ありゃ、コじゃねえし」
「お前みたいなヤツばっかだと、ほんと生きにくいだろーなー女性陣は」
「男も女ももぴちぴち推奨」
「たまにはびちびちも味見しなさいよ。賞味期限と消費期限は違うんだよ」
「濁点反対」
「『カレン』にも濁点入ってんだろ」
「…………冗談じゃねえよ。帰る!」
「帰れ帰れ。あー、処方箋だけ置いてけ」
「………保険証手続き中にしとくから、すぐに手配させろよ」
「へいへい」
医師は、結局そのまま走って帰っていった。
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