【CrazieR】1.納豆ピザトースト

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(そうだった。訳の分からない日本人の汚い事務所だ。……俺がΩでHeatしてるとか言われて、アディソンに薬飲まされたな。……そのせいか。こんなところで熟睡なんて。……現役なら死んでるところだ)  いや、古いだけで、決して汚くはない。埃なんてひとつも落ちていないから。  音もなく立ち上がり、ハヤセがそっとドアの向こうを覗いてみると、先ほど自分をここへ引っ張ってきた妙な男が机の上でガリガリと髪をかき上げていた。なんとなく後ろに回ってデスクを覗き込んだら、ハヤセは柄にもなく吹き出しそうになった。 「あんた、Lawyer?……それでよく商売が成り立ってるな。その訴状、受け付けてもらえるのか」  こんな雑な書類、見たことがない。  内容はともかく、全く文章用のソフトが生かされていない。 「……これなら、手書きの方がマシ」 「あ?るせえよ。書類は嫌いなんだよ。事務員が辞めちまったの」 「借りはなしだ」  やや呆れたような表情でレザージャケットを脱ぎ、ハヤセは「Move!」と遠慮なく荻野の肩をどついて避けさせ、パソコンの前に座った。怪訝そうにそれを覗き込んだ荻野に、ハヤセはひらりと片手を上げた。 「No worries」  トントントン。
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