【CrazieR】1.納豆ピザトースト

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 小気味良いキータッチの音が響き始めた。リズム良く、一定の速度で文章が表示されていく。  どうやら、訴状を作り直してくれるようだ。 「……英語圏出身だろ?漢字まで使えんの。日本語でレポート書いてたのか」 「父は日本人。漢字は読めるけど手では書けない」 「あ、そ……。腹減らねえ?」 「減った」 「嫌いなもんは?」 「納豆」 「パンと米、どっちがいい?」 「Bread」 「……あ、そ」  何、この和洋折衷のような、日英混在の会話。  他にやることがないわけではないが、とりあえずパソコンは一台しかない。荻野はブランチを用意することにした。 「納豆が嫌い?勿体ねーやつ」  十分後には、 「Done」 「できたー。こっちこい」  同じタイミングで。  ハヤセは呼ばれて立ち上がると、ダイニングらしきスペースに立った。  テーブルには、何やらピザトーストのようなものがのった皿と、コーヒー。 「椅子は?」 「ねえよ。普段ここ使うの俺だけだし」 「……」 「食ってみろ?」 「……何。この食べ物、見たことがない」 「納豆ピザトースト」 「……いらない。嫌いだって言っただろ。臭いに耐えられない」  まあまあ、と荻野は皿を手渡した。 「絶対に食えるから」
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