【CrazieR】 2.甘くないパンケーキ

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【CrazieR】 2.甘くないパンケーキ

「……あんた、仕事する気あんの」 「で!」    ハヤセと出会って2ヶ月。  相変わらずハヤセは荻野の事務所(いつの間にかシャワーブースが設置されている)で寝起きをしている。  ハヤセはとっとと保健の手続きをし、荻野は約束通り毎朝2枚の納豆トーストを焼いて誰にも文句を言われることのない完璧な書類を確保し。何となく日常生活で冗談を言い合えるようにもなりつつ、お互いに干渉しすぎない程度に相手を理解しつつ、割と仕事仲間として、まあまあ友人関係としては順調で良好だ。  そして、 「お前の名前は?」 「ハヤセ」 「フルネーム!」 「何で」 「お前引き取りに行って、フルネーム知らないっておかしいだろ!もう真っ当な市民だろ?偽名は受け付けねーぞ。本名フルネームで言わねえなら、とっとと放り出す!」  ふむ。 「……クイン・ハヤセ・暁月」 「アカツキ?漢字?」  ハヤセは置いてあったスマホを取ると、画面に示した。 「へえ。いい字だな」  これが出会って3日目の出来事。  こうして荻野は、ハヤセのフルネームを知る、数少ない人間の一人になった。  というのも、だ。
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