【CrazieR】0.猫は、豹になったりする?

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【CrazieR】0.猫は、豹になったりする?

 微かに、鈍く重たい音がした。 「……?」  お気に入りのフットボーチームの敗戦が続き、仕事もほっぽり出して当分飲んだくれていた荻野は、『いい加減に仕事して下さい!』と、流石にプチ切れた事務の女性の一言で重い腰をあげたのだ。 「……とゆーか。あいつが俺の代わりに仕事した方が手っ取り早く売上上がるだろ……」  法令遵守。  非弁行為はご遠慮ください。  弁護士のあなたがご存じないとは思いませんが、念のため。  いつもより二時間早い出勤。開業して2年目の個人事務所は、このビルの2階にある。 「……朝っぱらから、盛ってんじゃねえ……」  あとに続くはずだった言葉は「だろうな」。  ビルとビルの隙間をひょいと覗き込む。  外国の映画にでも出てきそうな僅かな建物の隙間には、銀短髪の後ろ姿があった。その足元には、ボコボコにされて白目を剥いた恰幅の良い輩がのびている。 「お前」  ゆっくりと振り向いたその無表情は、男女がわからないくらいに恐ろしくキレイだった。
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