【CrazieR】 2.甘くないパンケーキ

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「彼のところ、居心地がいいんでしょう?」  未だに事務所で寝起きをしているが、荻野は文句も言わない。 「悪くはない」 「本当に、素直じゃないわね。3食、バイト、シャワー付きで家賃無料?普通、無いわよ、そんなところ」  確かにそうだ。 「はい、以上で私からのお説教は終わり。わかったなら、帰っていいわよ」 「?迎えは?」 「私が話をしておいたから、受け人は不要。そのかわり、絶対に騒ぎは起こさない、巻き込まれない、が条件よ。目立たないように下を向いて走って帰りなさい。自分で帰れるでしょう」 「荻野呼んで」  ハヤセの即答に、一瞬松織が目を丸くした。  まさか、ハヤセが他人を指名するなんて。  いつの間にか、荻野の存在がハヤセの一部になっているということだ。 「自分でしなさい」  そこにあった固定電話をどん、とハヤセの目の前に置くと、松織は受話器を取った彼を見て小さく笑った。  という経緯があり。  そして。 「でも何で料理。お前、包丁も使えねーのに」 「不器用じゃ無いからできる」  いや、確かに?諜報員が不器用って、聞いたことないけど。
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