【CrazieR】 2.甘くないパンケーキ

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「うまいもの食べると、嬉しいし幸せになって、自然に笑うだろ。俺の周りは殺伐としすぎてたから、のんびり笑うのもいいかなと」  ……へえ。  荻野が目を丸くした。 「んじゃ、まずお前が笑えよ。愛想の悪い店主の店で、誰が食事したいんだよ」 「それは無理。腕で勝負するから、愛想はいい」  さいですか。  へーへー、とその気もなさそうな返事を聞きつつ、ハヤセは自分好みのパンケーキを作り上げると、うまそうに食べ始めた。 (確かに。幸せそうな顔にはなるな)  普段は絶対に見せない、ハヤセにしては随分と柔らかな表情。  はー、と荻野がため息をつきつつ窓の向こうに視線をやると、一瞬だけハヤセはその顔に視線を投げた。  松織の指摘はさておいて。  荻野が作った納豆トーストがうまかったからそんなことを思いついたなんて。  絶っ対に、教えてやらない。    
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