【CrazieR】 3.どノーマルな肉食

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 この事務所の下だった。 「お」  ふら、と一瞬足元が揺らいだハヤセの肩を押して支えると、 「お前、薬は」 「何で」 「Heat始まってんだろ!」 「あ。それでか」 「自己管理!!」  ハヤセはHeat期になると、やや平衡感覚が鈍くなる。フェロモンはそれなりに発するが繁殖欲はほぼ感じないようで、「その気」にはならないらしい。本人はケロッとして気づかないらしく、周り(特に荻野)は大いに迷惑だ。  それでも当事者のΩ本人は、ポケットからピルケースを取り出した。 「へえ。割と広い。何だよ、きれいだな」 「仲介業者の担当が、ざっと掃除はしといてくれた」    ざっと?  いやお前、絶対に脅しただろ。  何年も使われていなかったはずのそこは、そのままテーブルが置けるくらいにピカピカ。   「こんな風に、しようかな、と。思うけど」  かさ、といつの間にか手にしていた大きな図面を開き。 「何」 「俺が意見していいの」 「いいだろ。何で」 「そう?俺、共同経営者でも何でもねえのに?」  ぱち。  ハヤセがまん丸な眼で荻野を見上げた。 (そう言えば、そうか) 「…………」
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