【CrazieR】 3.どノーマルな肉食

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 反応なし。    流石に持たされた鍵で玄関までは開かないだろうと思いきや。  かちゃ。 (……あいつ、アホか。普通、キーは違うものにするだろ)  何と開いた。  が。既に時間は時間は7:55。遠慮なくドアを開くと。    どこか海外にでも来たような感覚に襲われた。  玄関に入るとそこは、ダークトーンで統一されたモダンな家具がセンス良く配置された、広いリビングだ。  目の前に壁や柱がない広々とした空間に、ハヤセにとっては懐かしくも思える雰囲気の家具。  日本ではあまりお目にかからない大きなソファーとローテーブルは、ハヤセも好む海外のインテリアメーカーのものだろう。正面の大きな窓には、気持ちの良い青空が広がっている。  間接照明やローテーブル、無造作に置かれた雑誌も、部屋にとてもよく馴染んでいる。  前職では、仕事で頻繁に海外を飛び回っていたのでどこか懐かしい雰囲気でもあった。  そこでふと現実に戻ったハヤセは思った。 (今の俺は、何で自分の部屋を作ろうと(部屋を借りようと)思わないんだろうか)    そう、きっと、あの部屋のせい。  ハヤセ自身が住んでいた部屋と、雰囲気が良く似ていた、荻野の部屋。 「ハヤセ?」  無意識に目が細くなった正面の青年を見た荻野が怪訝そうに声をかけた。 「…………」  そうだった。  部屋の雰囲気と一緒に腹が立つことも思い出した。
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