【CrazieR】 3.どノーマルな肉食

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 うず。  妙な感覚が、ハヤセの身体の真ん中に走った。 「いくら電話しても出ないし、仕方なく頼まれた荷物も持って朝っぱらからタクシー飛ばして行ってやったら」 「う」 「本人じゃなくて、夜通しよろしくやってた女が出てきたなんて」 「…………」 「誰だって腹立てて当然じゃないの」 「……ごめん」  どくん。 (ん?)  ハヤセの心臓が跳ねた。 「そうだな。悪かった」  どくん! 「……え?」  一気に体温が上がり始めた感覚に、一瞬ハヤセは目眩を覚えた。  ふら、と足元が揺らぎ、 「おい」  荻野に腕を掴まれた。 「何……」  心拍数が上がり、呼吸が浅くなる。  目の前が白くなった。 「何だよ急に」  びく! 「ハヤセ?」  聞き慣れたはずの声が、ハヤセの身体の芯をざわりと撫でた。  気持ちが悪いほど、何かを求めるように身体が疼く。  こんな感覚、初めてだ。 「……う」  力が抜けた足で床を踏み締め、ハヤセは荻野の指を振り払った。 「離せ」 「足が震えてる」 「……っ!!」    耳障りの良すぎる声。  こいつ、こんな声だったか。  ぶる、とハヤセが肩を震わせた。
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