【CrazieR】 3.どノーマルな肉食

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「ちょっと来い……ハヤセ!」 「さわ、るな」  身体を捩って荻野の指から逃れ、ハヤセは壁に背中を押しつけた。  欲しい。 「……え?」  目の前のαが、欲しい。    ……何で?? 「出てけ」 「ハヤセ」 「……出てけ」 「おい」 「出てけ」  震えを押し殺して、低く呟かれたそれに。  荻野は僅かに目を細め、 「……落ち着いたら上がってこい」  そのままハヤセから距離を取ったまま、静かに言うと荻野は出て行った。 「……は……」  浅い息を繰り返し、背中を壁に押しつけたまま。  ハヤセは薄く汗の浮いた額を天井に向けた。  まだ、鼓動が早い。    Heatのせいか。   「……Ωってのは、厄介な身体だな」  今度は、視線を足もとに移して。  そういえば。  ここに住み始めてから、女を抱いていない。    その容姿も手伝って、ハヤセは全く相手に不自由はしていなかった。  はっきり言って「どノーマルな肉食」だったハヤセは、特に特定の相手を持つわけでもなかったが、とにかく女性が放っておかなかった。
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