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(とりあえず、ちゃんと荻野にも見てほしい)
と言うのが、正直なところ。他のことを差し置いても、あの荻野の部屋はハヤセの好みだ。
(抑制剤も効いてるし)
大丈夫だろう。
立ち上がり、コーヒーを淹れようと豆の缶を開けたところ。
「……無くなる前に言えって言ってんのに」
空。
そうなると、無性に飲みたくなる。
それも、お気に入りの「このブレンド」で、「濃いめ」に淹れるコーヒーが。
「ったく」
ハヤセは上着を取ると、ブーツの音を響かせて階段を降りた。
「喉が渇いたな」
地下鉄から降り、地上に出た荻野は。
(あー。コーヒー豆、使い切ってたなー。まーた叱られそう。買って帰るか)
やはりタイミング良くそれを思い出していた。
ちょうどかどうだか、ここから事務所とは反対方向へ徒歩5分のところに行きつけの店がある。コーヒー好きが高じて店を出したというオーナーは、もはやコーヒーに関する知識は仙人レベル。店オリジナルのブレンドは、ハヤセが偉く気に入っている。
荻野の足が、店の方向を向いた頃。
「っつ……」
肩を押さえたハヤセは、鋭い視線で斜め後ろに視線をやっていた。
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