【CrazieR】 4.コーヒーと、一時停止

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(とりあえず、ちゃんと荻野にも見てほしい)  と言うのが、正直なところ。他のことを差し置いても、あの荻野の部屋はハヤセの好みだ。 (抑制剤も効いてるし)  大丈夫だろう。  立ち上がり、コーヒーを淹れようと豆の缶を開けたところ。 「……無くなる前に言えって言ってんのに」  空。  そうなると、無性に飲みたくなる。  それも、お気に入りの「このブレンド」で、「濃いめ」に淹れるコーヒーが。 「ったく」  ハヤセは上着(レザージャケット)を取ると、ブーツの音を響かせて階段を降りた。 「喉が渇いたな」  地下鉄から降り、地上に出た荻野は。 (あー。コーヒー豆、使い切ってたなー。まーた叱られそう。買って帰るか)  やはりタイミング良くそれを思い出していた。  ちょうどかどうだか、ここから事務所とは反対方向へ徒歩5分のところに行きつけの店がある。コーヒー好きが高じて店を出したというオーナーは、もはやコーヒーに関する知識は仙人レベル。店オリジナルのブレンドは、ハヤセが偉く気に入っている。  荻野の足が、店の方向を向いた頃。 「っつ……」  肩を押さえたハヤセは、鋭い視線で斜め後ろに視線をやっていた。
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