【CrazieR】 4.コーヒーと、一時停止

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『俺の身が持たねえ。どんだけお前に手間暇取られてると思ってんだ?俺は、親でも恋人でも、親友でもねーの!そのうち、廃業よ?このままじゃ』  いつだかの、荻野との会話を思い出した。  はあ。  とりあえず、逃げとくか。  こんな素人数人、なんてことはないが。  変なグループの一員で、また後でやり返されてもたまったもんじゃない。  伸びてきた手を払い、一瞬屈んで隙をついて走り出そうとしたところ。  え。  ふら、と足元がふらつき、次の瞬間に一人に羽交締めにされた。 (う、そだろ……)  そう。Heat期は、いつもと勝手が違う。 (くそ)  一瞬自分に信じられない思いを呟きつつ、自分を捕まえた男の急所をブーツの踵で蹴り上げた。 「ぐっ!」  くぐもった声がして、後ろの男の腕が緩むと、ハヤセはすっと身を屈めた。  そして、地面を蹴ろうとした時だ。  腹部に激痛が走った。 「……は……」  しまった。  相手は数人いたのに、注意力が散漫だった。  息が、できない。  顔を顰め、それでもハヤセは身を屈めて殴りかかってきた男をうまくやり過ごすと、息が吸えないまま他を振り切って走り出した。
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