【CrazieR】 4.コーヒーと、一時停止

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 いつものお気に入りのブレンドと、新しく試してみたい豆と、その他あれこれを容赦なく買わされた荻野はげっそりとした表情で荷物を持ちつつハヤセの後ろを歩いて事務所へ帰還した。  そのまま言われるがままにコーヒーを淹れ。  話を聞きつつハヤセ専用のカップにお気に入りのブレンドコーヒーをストレートでなみなみと注いでやり、 「へえ。逃げようとしたわけね」  ぽふ、と手のひらでハヤセの頭を撫でるとカップを手渡した。 「えらかったえらかった」  どくん。  やはり、ハヤセの心臓が大きく打ち、身体の芯がぞわりと騒いだ。  触りたい。  触られたい。  欲しい。  呑み込みたい。  欲しい。 (も、勘弁して)  それこそ観念したハヤセがテーブルにカップを置いた。 「……荻野」 「ん?」 「……あんた、男、抱ける?」 「は?」  荻野、一時停止。
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