【CrazieR】0.猫は、豹になったりする?

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 する、とふくらはぎに唇を滑らせると、びく、と背中が反った。 「ほら。眼、閉じるなって」  ゆる、と現れた瞳の前で、ぐい、と自分の前髪をかき上げて、実は笑っちゃうほど整った顔を見せてやると、思った通りハヤセの唇が震えた。  いつもは眼鏡とボサボサの髪で隠れている、荻野の顔。  ハヤセが特に好む、最中の色めいた荻野の顔。  ふる、と肩を震わせて自分の手の甲で声を殺しにかかったハヤセの手首をシーツに縫い付けてやると、 「あ」  きれいな顔は耐えるように唇を震わせた。 「声出せ?……俺は、それに感じるの。……な」 「……ん……、ぁ、……あ」  殺せない声が、唇から漏れる。 「俺とお前の赤ん坊、産みたくねえ?」  そう。聞こえていないことなんて解って聞いている。 「……ぃ……」  ぐい、と奥まで腰を入れ、突く速度を上げてやると、細い身体は呆気なく追い上げられて細かく震え始めた。 「……も、と……ぉく……」  いつもは感情をどこかに置き忘れて来たんじゃないかと思うくらいクールなくせに、荻野に抱かれる時だけは少女のように儚げに吐息し、子どものように素直に欲しがってくれる。
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