【CrazieR】 5.すげー変貌しやがった

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 こと、とハヤセの頭から力が抜け、完全に意識が飛んでしまった。 「ハヤセ?」  やや焦った感のある表情で、荻野がハヤセの頬に触れると、青いが穏やかな表情からは、穏やかな息遣いが聞こえた。  それはいくらか荻野をほっとさせ。 「ったく。すげー変貌しやがって……」  今までどんな女を抱いたって、ここまで余裕を無くしたことなんてなかった。 (真面目に。運命の、って、あったりして)  今までΩと出会ったことすらなかったし、「運命の番」なんて絶対にあり得ないと思っていた。  が。  ハヤセを一眼見た時に、何か普通ではないものを感じたのは事実。  その時には別に「一目惚れ」だの「抱きたい」だのとは思わなかったが。 「αとΩなんてこんなもんか?」とこの中途半端な感覚に荻野は半信半疑のまま、それでもハヤセはHeat期でも全く荻野に欲情しなかった。 (俺だけが何か引っ掛かってんのか)  なんだかんだ言って、荻野も女に不自由をしたことはない。  その中から、それでもなんとなくハヤセに似たような容貌の女と知り合って軽く付き合っていたらハヤセに見つかった、というオチだった。 「お前から誘ってくるなんてね」  いやあ、めちゃくちゃ嬉しいことだけど。  でも。 (当分、こっちに主導権もらっとくからな)    対等よりは、やや優位にいたいのが、荻野だから。
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