【CrazieR】 6.CrazieR、開店です

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【CrazieR】 6.CrazieR、開店です

 あれから、ハヤセは寝床を荻野の自宅に移していた。恋人になれたらいいな、なんて密かに考えていた荻野は、それこそ素っ気ないハヤセに、「身体だけ?」なんてやや半眼になっていたが、一緒に生活をしてみたら。  優しい、小っ恥ずかしい愛の言葉なんて囁いたりしないが、随分と心地がいいことに二人ともが気づいていた。  荻野はそこそこ気が利いて、ハヤセはそこそこフットワークがいい。  仕事も食事もセックスも、お互いが求めるポイントも満足するラインもほぼ同じ。  いつの間にか、隣にいることが当たり前になって、抱き合って、名前を呼んで、無意識にお互いを確かめ合っていた。  気がつけば、二人で同じ時間を共有しているだけで心が満たされるなんて言う、ごくごく普通の幸せを実感しあっている。  特にハヤセは、可愛らしく告白することも特別に尽くすこともないが、荻野の傍にいることが実は何から何まで心地いいと頭と身体で納得したところで、堂々と「あんたは俺のもの」と、荻野の所有権を主張中。そういう意味で近づいてくる者は、あの冷たい視線とオーラで、男も女もとことん排除中だ。まあ、荻野に限ってはそんなハヤセが「可愛い」と思えるのだから、二人の相性は悪くはない。    なんだかんだで着々と準備を進め、開店まであと二週間ほど。 「看板は出さない」なんて言って聞かないハヤセに、それでも店の名前はいるだろう、と内装のアドバイスと共に荻野がうんぬんかんぬん言っていたころ。 「お前、店の名前決めたの」  1日が終わり、先にシャワーを浴びて全裸のままベッドで寝転んで本を読んでいたハヤセの腰を荻野が揺らした。 「決めた」 「何」 「教えない」
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