【CrazieR】 6.CrazieR、開店です

5/8
前へ
/403ページ
次へ
「どー考えても、宣伝が足りねーだろ」  開店当日から閑古鳥。  とりあえず開店は18時、現在20時まで客はゼロ。 「花の一つでも贈って寄越すやついないのかよ」  広くない店の入り口をくぐると、店の中はまるで外国の部屋だ。  カウンターがなければ、のんびりとくつろげそうなただただセンスの良い空間。  こんなところで、好きな料理が食べられるなんて最高じゃないか。  なんて荻野は思うのだが。  まあ、思うのは勝手。  と。  静かにドアが開き、 「あ、香」 「こんばんは。いい雰囲気ね」  ツヤツヤ黒髪ボブ、小柄でやや目元がキツい印象の、完璧メイクで年齢は分からないが、いかにもできそうな女性の松織が花束を持って入ってきた。 「自分で飾りたいって言うから、持ってきたわよ」 「ありがと」 「お前、断ったわけ?」 「あんなのカッコ悪い」 「…………」  相変わらずね、と松織は笑って荻野の前に立った。 「こちらがハヤセのパートナー?」 「ん。荻野。荻野、こっちは」 「松織香です。ハヤセが現役諜報員の時に、向こうで一緒に仕事をしたことがあって。結構な腐れ縁ね」 「それなりにWin-Win」 「かしら」  ふふ。  ガシャン、バタバタバタ!  荻野が顔を上げると、ドヤドヤと数人の男性が入ってきた。 「ボスー!お待たせ――――!こんばんは――――っ!うっわ、かっこいい店だなあ」 「カレン、うるさい」 「ほら大智、いいから。こら止まるな、奥入れ奥。久遠、押すなって」
/403ページ

最初のコメントを投稿しよう!

653人が本棚に入れています
本棚に追加