【CrazieR】1.納豆ピザトースト

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【CrazieR】1.納豆ピザトースト

 拾った野良猫は。  いや、野良猫なんてもんじゃなかった。  豹だ、豹。    年齢不詳。  荻野がやっと聞き出した名前は「ハヤセ」。苗字なんだか名前なんだかもよくわからない。  殆ど喋らないし表情なんて全く無いが、頭のキレがいいのは動きでわかる。そして、時々出てくる日本語が妙にうまい。日本に所縁がある?? 「Heat?俺が?」 「他に誰がいるってんだよ、いまここに」  全くピンと来た様子もなく、まるで他人事のように呟いたハヤセに、間髪入れずに荻野がツッコミを入れた。まさかΩの抑制剤など持っているはずもなく、自分α用の抑制剤をとりあえず噛み砕くと、荻野はハヤセを引っ張り上げ、二階の事務所に押し込んだのだ。それができたのは、荻野に多少の武術の心得があったことと、相手がHeatの状態で、平素よりはやや緩慢となっていたから。  ともすると視線だけでその辺の生物の息の根を止めそうなハヤセは、それでも多少のやりとりから荻野を「危険分子」とは認識しなかったようだ。 「Ωなんて、知識しかない」  と、まるで他人事のようにのたまったハヤセに 「俺だって本物と出会ったのは、この歳になって初めてだよ」
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