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パンの木、確かテレビ番組で、ちらっと聞いたような、、
櫂は、テレビは、あまり見なかった、感動したと言うホームドラマも
劣悪な家庭で育った櫂には、絵空事にしか見えず
人気が有ると言う、学園ドラマも、櫂には興味無かった。
朝起きて、その日の天気を見るか、動物や植物が出て来る
ノンフィクションの映像を、見る位だった。
「これが、、、」櫂は、その木を見て言葉を失う。
まるっきりパンの形の実が、たわわに実っていた。
それを一つ採って見る、香りはしないが、手触りは、パンそのものだった。
一口かじると、ふわふわで、それまで無かったのに
香ばしいパンの香りが、口いっぱいに広がる。
夢中で一つ食べ、もう一つ手に取って、ふと思いつき
桃苺を、間に挟んで食べてみると、高級なフルーツサンドになった。
「これは良い!!」櫂は、大喜びする。
『こんな木を作るなんて、神様も、遊び心が有るんだな~』等と思っていると
「あ、袋鼠です、倒して下さい」と、ナビが言う。
見ると、まるでカピパラみたいな、動物が二匹並んで出て来た。
ナビの叫び声に、思わず、手に持っていた剣で、二匹を切る。
「お見事!!最初の獲物ですね、食べますか?」「え?食べるの?これ?」
「はい、結構美味しいそうですよ」「い、いや、良いよ」
仮にも、鼠と名前が付いているのだ、鼠は、食べたく無かった。
「では、皮を剥いで来ましょう、集めて街に持って行けば、売れますから」
「皮を剝ぐ?どこで?」「この先に、川が有りますから」
「俺、そんな事、出来ないけど」「お任せ下さい、私は、得意です」
そう言うと、ナビは二匹を持って、さっさと川へと向かう。
「俺も、汚れた剣、洗って来よう」櫂も、一緒に付いて行き、皮を剥いでいる
ナビから離れた、上流の、岩で遮られ、水が溜まっている所に腰を下ろし
水面を見た櫂は「誰だ?これ?」と、驚きの声を上げる。
水面に映っていたのは、金髪に青い目の、まだ10代くらいの男の子だった。
「誰って、櫂様しか居ませんが」「何で、こんな姿に、、」
「転生されましたからね、少し、姿も変わるのですよ」「、、、そうか」
見た目だけは、ちょっとイケメンっぽくなった、まぁ、良いかと、櫂は思う。
ナビは、せっせと肉をさばきながら「獲物を倒せば、その獲物のスキルも
貰えますからね、沢山、倒しましょう」と、言う。
スキル?そう言えば、弟弟子にせがまれて、アニメの劇場版と言うものを
見に行った時、やっぱり転生した主人公が、いろいろなスキルを身に付けて
巨大な敵を倒すと言う物語で、結構面白かった。
赤いドラゴンの、灼熱と言うスキル、強い魔物の百人力
あんなスキルが貰えるのか?櫂は、わくわくして来た。
「この袋鼠は、作った袋の中で生活しています、ですから
袋鼠のスキルは、袋作りですね」「袋作り?」
何だそれ、袋を作ってどうなるんだ?買い物に行く、主婦じゃあるまいし
期待した分、櫂は、がっかりした。
ナビは、傍の真っ直ぐで、固い草を折ると、それに肉を突き刺し
右手に持ち、左手には、皮を持って「さぁ、帰りましょう」と、立ち上がった
帰る途中で「蜘蛛が巣を張りましたね、櫂様、蜘蛛をやっつけて下さい」
と、ナビが言う「蜘蛛が?でかっ」櫂の掌位ある、大きな蜘蛛が
櫂たちの通り道に巣を張っていた。
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