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張り切っている所為か、また力が強くなったのか、櫂が漕ぐ船は
この前より、格段に速く島に着き、積み込んだ荷物を降ろす。
「櫂、このでっかい鍋は、何に使うんだ?」
エドが、普通サイズの鍋や、フライパンが入っている
大きな鍋を降ろしながら聞く。
「湯を沸かすんだよ、俺たちは、水浴びでも良いけど、ナビは女だからな~
やっぱり、湯じゃ無いと可哀そうだろ?」「そう言う事か」
降ろした荷物を担ぎ、この前、草を刈った道を進む。
その道には、もう草が、10センチ近くも伸びていた。
「草の、成長が早いな~」それを見たエドが言う。
「南の島だと言っても、もう秋なんだろ?
草も、それほど伸びないと思ってたんだけど」櫂が、そう言うと
「二人とも、雑草の力を甘く見ちゃ駄目よ」食材の入った
大きなリュックを背負って、二人の後を歩く、ナビがそう言う。
一回目の荷物を、家の前に置くと、エドとケイナは、また船に戻り
積んで来た板を担いで、戻って来る。
その間に、櫂は、床板代わりにしていた竹を取り外していた。
さすがに、竹のでこぼこの上では、眠れない、そう思ったのだ。
そして、エドとケイナが持って来た板を、片っ端から張って行く。
「床板の長さは、もう図って切っていたんですね」ケイナが感心する。
床を張り終え、取り外した竹は、壁の代わりにする。
船が、それほど大きく無いので、壁板までは、積めなかったからだ。
「この、小さい板は、何にするんですか?」ケイナが聞く。
「盥を作るんだ、竹が必要だったから、こっちで完成させようと思って」
そう言うと、櫂は竹林に行き、竹を切って来て、籠を作る時みたいに
薄くした竹を使って、板の周りを囲み、盥を作り上げた。
「おお~っ、何もかもがぴったり!!櫂は、桶職人にもなれるな」
エドは、感心し、ナビもケイナも、あまりにも早い、その仕事に
「まるでマジックみたいだ」と、目を丸くする。
その後、男達は、竹林から、竹を沢山切って来て
壁に、足りなかった分を足して、壁を作り上げると、家の前に
ウッドデッキならぬ、バンブーデッキを作った。
ナビは、その間に、大きな鍋を綺麗に洗い、二口有る竈の一つに掛け
水を入れると、湯を沸かした。
その湯を使って、大量のパスタを茹で
もう一つの竈の、フライパンで、目玉焼きを作り、その後
トマト味のソースを作って、パスタを戻し絡める。
皿に、てんこ盛りにして、その上に、目玉焼きを乗せ
「皆さ~ん~お昼ですよ~」と、呼ぶ。
男達は、大盛りのパスタを、ぺろりと平らげ、一休みすると
「午後は、島内を、探検しよう」と、言う事になった。
鋸や鉈、鎌やスコップ、ナイフ等、必要だと思う道具を、それぞれが持ち
ナビは、背負い籠に、飲み水と、採集した物を入れる袋を、数枚入れて担ぐ。
まず、二枚の田んぼの先に行く、草だらけの中に、一本の木が有った。
「花が咲いて見ないと分からないけど、何だか梅みたいだな~」
櫂は、そう言う、もし、梅なら梅干しが作れる、梅だと良いなと思う。
その先は、石を積んで作られた、段々畑になっていて、そこにも木が有る。
「これは、蜜柑の木じゃないかな~」櫂がそう言うと「蜜柑?」
エドが、何だ?という顔をする「オレンジの仲間だよ」
「そう言われれば、オレンジの木だよ、これ」
エドが、葉っぱの匂いを嗅いで言う「レモンかも知れませんよ」
ケイナが、そう言うと「レモンなら、もっと棘が鋭いわよ」と、ナビが言う。
これも、花が咲いて見ないと、分からないが、柑橘系だという事は分かった。
その先は、なだらかに下る、木が生い茂る森が、海岸へと繋がっていた。
「ここで、夕食用に、何か獲って帰ろう」「賛成!!」
早速、皆は獲物を探して、あちこちに散らばる。
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