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「それで、どの位のお金になるんだ?」と、櫂は聞いてみた。
「大した金額にはなりません、二本合わせても、300リル位でしょうか」
リルと言うのが、この国の通貨の呼び方みたいだが
それが、日本円にして、どれ位なのかは、全く分からない。
「俺も、この国の一員になったんだから、所得税とか、住民税とか
国民年金とか、国民保険とか、国に納めるお金が、必要なのでは?」
この四つを支払うお金で、櫂は、随分苦労したので、心配になる。
手間賃が良い大工の所得税は、結構高い、それに連動して高くなる
住民税と、国民保険料、だが、稼ぎの半分は養父が持って行く。
その中で、高い税金を払うのは、本当に苦労したものだ。
「ご心配なく、この国には、税金などと言うものは、有りませんし
年金とか保険とかも有りません、全て、自分の事は、自分でという国です」
「そうか~良かった」櫂は、ほっとした。
それなら、自分が食べるだけの食料が有れば良いんだ。
ナビは、ロボットだから、何も食べないと言っていたし
ここには、パンの木も有り、桃苺の他にも、何か果物が有りそうだ。
草葺きだが、家も出来た、何より心強いナビが居る。
ここでの生活、何とかなりそうだなと、櫂は思った。
「あっ、櫂様、大変!!」ナビの叫びに、足元を見ると
袋鼠が二匹、家の柱を齧っていた。
「こら~っ」櫂は、剣を振るって、二匹を倒す。
「こんな事も有るのか~油断できないな」
折角の家の柱は、齧られて細くなった、櫂は木を切って来て、杭を作り
細くなった柱の横に打ち込み、蔓で縛って補強した。
「袋鼠は、歯が伸びすぎない様に、何でも齧ります」ナビが、そう教える。
「この森には、嫌というほど木が有るのに、何で、わざわざ俺の家を、、
建てたばかりで、もうリフォームだ」櫂は、ぶつぶつ言いながら、屋根を見て
「ああっ、蜘蛛が、もう巣を張ってる」と、その蜘蛛も退治する。
「水は、あの川しか無いよな」櫂がそう言うと
「はい、綺麗なので、そのまま飲んでも大丈夫です」と、ナビは言う。
「じゃ、ちょっと水を汲んで来るよ」櫂は、折り畳みのバケツを取り出した
「それで、水を?」ナビは、ぺちゃんこのバケツを見て言う。
「うん、ほらね」櫂は、引っ張って、バケツの形を作る。
「わぁ~っ!!」ナビは、初めて見たと、目を輝かせた。
「キャンプで使う食器も、全部重ねて一つになる様に、作られているんだ」
そう言って、櫂は、リュックから、重ねた食器も出して見せる。
「随分、合理的に作られているんですね~」ナビは、感心した顔で言った。
川に着き、バケツに水を汲み、ナビが袋鼠をさばいている先を見た櫂は
「あっ、でかい蟹が居る」と、ナビに知らせる。
「あれは、モクズガニと言って、食べると美味しいそうです」
「よし、捕まえて食べよう」パン以外に、蛋白質も欲しい所だった。
「ハサミに気を付けて下さい」ナビは、そう注意したが
櫂は、あっさり蟹を倒し「昼飯は、焼きガニだ」と、傍に有った蔓で
小さな篭を編んで、その中に入れ、手に下げた。
「その篭、便利ですね、私にも作って下さい」ナビにそう言われ
櫂は、さっさと、もう一つ作る。
元々、手先は器用だったが、こんな篭が、直ぐに作れるとは、、、
「蜘蛛の、スキルのお陰でしょうね」ナビは、何事も無いように言った。
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