1人ご帰宅

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1人ご帰宅

 保は自分の部屋に1人で戻った。  バッグを放り出して畳の上に大の字になった。 「あー!!」  天井に向かって叫んだ。  ひどく気分がわるかった。  江利に腹を立てているわけではない。  今日のデート後半の自分のことが、気持ちわるかった。 「ばっかじゃねえの? 僕って。」  恋人の美人友達にこっそり誘われて、ドラマみたいだなんて浮かれてほいほい出掛けて、浮気心を出すなんて。 「神様~。  どうかなかったことにしてください~。」  保は寝転がったまま、両手をすり合わせた。  その時、インターホンが鳴った。  出てみると、大奈だった。 「あ、は、はい!」  すっとんきょうな返事をした保は、一応服を確認した。こういう時、ドラマではこっそり口紅など付けられていることもある。  さいわい、そんなことはなかったので、保はドアを開けた。 「おう、どした?」 「寒いから、スープでもと思って作ってきたの。」 「え、ありがとう。」  保はなんだかひどくホッとした。 「上がれよ。」 「ううん。今日はもう遅いから、これだけ渡して帰るわ。」  ステンレスのボトルを手渡されて、保はまたまたホッとした。嬉しくなって、その場でボトルを開けて飲もうとした。 「アチッ」 「やだ、コーンスープなのに、いきなり飲むなんて。  火傷した?」 「したけど大丈夫。  喋れるし、笑える。」  二人は額をくっつけて笑った。  保は先ほどまでの気持ちわるさが洗われていくのを感じた。  それと共に、大奈への愛しさが増した。 「今日はごめん。」 「なんのこと?」 「休日なのに1人にして。」 「かまわないわ、お互い別々に過ごす時間も必要よ。  よく言うでしょう?  離れている時間が愛を育てるって。  じゃあ、おやすみなさい。」 「あ……。」  大奈がドアを閉じる時、保はひどく名残惜しげな顔を見せた。大奈は微笑みを残してドアをそのまま閉じた。  マンションの廊下を歩きながら、ふふっと笑った。 「染まるわ、染まる、あなたは染まるの……。」
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