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プロローグ
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マリーとオランプは、閑静な寄宿舎「ジムナーズ」で暮らす15歳の少女。
ふたりは性格こそ真反対だがなぜか馬が合い、唯一無二の親友同士だった。ある夜、オランプがマリーにささやく。
「ねえ、私たちがスタッフに毎晩飲まされているあれって、いったいなんの薬だと思う?」
見当もつかないというふうに首を振るマリーに、オランプは続ける。
「はっきりと説明もされない薬を黙って飲み続けるなんて、狂気の沙汰よ! ねえ、私と組んで、あの謎の薬の秘密を暴かない? 共犯者になりましょうよ」
喘息持ちが喘息の薬を飲まなくなれば、喘息を発症するように、私たちだって薬を飲まなければなんらかの症状を発現するはず。
私たちが断薬したならいったいどんな症状が出てくるのか、見極めてやるのよ。
そう得意げに言うオランプをマリーは放っておけない。ふたりは共犯者として、毎晩服用させられる薬をトイレで吐くことにした。
やがてふたりは、隠されてきた残酷な秘密を知ることになる。
それから約40年が経った。
大人の女性になったふたりは、それぞれ別の国のジムナーズの館長になっていた。
これは理想と現実の間ですれ違っていくかつての少女たちが、再び人生の糸を紡ぎ直すまでのお話。
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