第一章 「邂逅」

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 魔獣と人間の住む領域...そのちょうど境目の辺りを根城とする魔獣がいる。 人間の中でも特に魔獣の住む領域近くに暮らす者たちを中心に知られている、とても有名な話である。曰く、その魔獣は大きく恐ろしい見た目をしていると。曰く、その魔獣は人間を恨み周辺の村々から人を攫い殺していると。その話は、人を伝い様々なものへと変化してきた。時に、空を駆け、時に、神の御使いとなり、時に、人間に殺され、時に、改心し人間の良き隣人となり、この地に根付いてきた。真偽もわからないただの御伽話のようなものだと人は言う。ただ、一つだけ_その魔獣が作り話でもなんでもなく本当に存在しているということだけが確かなのだ。...そして今日も、そんな話を信じて遠路はるばる魔獣に会いに来た者が一人。 「あの話によると、此処に魔獣が居るようだな」 まだ、十代半ばの少年が、腰に一振りの剣を帯び、魔獣のいるらしい洞窟の入口に降り立つ。彼は魔獣専門のハンターとして、名を馳せている。しかし、彼の名声は彼が強いからでも、彼が一番魔獣を殺しているからでもない。少年が、良い意味でも悪い意味でも常に平等だからである。邪魔な魔獣を殺してもらおうと依頼をした人間が、この少年によって殺されたことなどざらにある。彼は、魔獣と人間のどちらもの敵であり味方なのだ。だから、今回も話の魔獣を殺しにきたのではなく、その魔獣が良い存在なのか悪い存在なのかを見極めに来たのである。
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